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2024.10.10 07:00ゴー宣道場

第3回 皇位継承の危機から見た『フランス革命の省察』~男系派が全然保守ではない23の理由

皇位継承の危機から見た『フランス革命の省察』
~男系派が全然保守ではない23の理由 byケロ坊

第3回 理性主義の危険さ

 

 

7.王室や伝統だけでなく、キリスト教も弾圧して貶めたフランス革命
『省察』では、革命が王室だけでなく、キリスト教・聖職者を迫害し、教会の土地を略奪したことを、かなりページを割いて批判しています。
フランスが近年イスラム教とやたらとトラブルを起こしたり、五輪開会式で最後の晩餐パロディでカトリックと問題を起こしたのも、革命で宗教自体を否定したカルトな国だからだと納得しました。

 

8.「Revolution」は全然カッコいいものじゃなかった
一般的に現代人は「革命」や「レボリューション」をいいものと捉えています。
(例としては渡辺美里の『My Revolution』、T.M.Revolution、サイレントサイレンの曲『KAKUMEI』、Dragon Ashは3枚目のアルバムが『Viva La Revolution』(革命万歳)でジャケットはドラクロワのパロディ、アニメ少女革命ウテナは決め台詞が「世界を革命する力を」など)
「Revolution」は国家体制そのものを変えることなので、「My Revolution」とか言ったらもう本来の意味がなくなってるとも言えますが、Revolutionや革命をいい意味で使うこと自体がフランス革命肯定の秀才の考え方なんですよね。
第八章でバークも、革命派がやってるのは「物事をこれまでと正反対にすること」と言っています。「Revolution」の語源は「Revolve」であり、「回転」です。
(ふと思ったのが、『メタルギアソリッド3』のリボルバーオセロットの名台詞が「俺のリロードはレボリューションだ!」なのは、Revolverと掛かってるんですね。余談終わり。)
「ひっくり返す」となると、トランプゲームの『大富豪』の「革命(通常3が一番弱く、2が一番強いのが逆になること)」はかなり本来の意味に近いです。
そうして国のあり様をひっくり返すのが革命の本来の意味ですが、それのどこがいいことなのでしょうか?『大富豪』でだって革命が有効かどうかは自分の手札によりますね。
今現在圧政に苦しんでいる人が革命に憧れるのはわかります。香港や中国の民主化活動家はもちろん中国共産党の体制をひっくり返したいと思うでしょう。
ナポレオン率いるフランス軍が「民衆を圧政から解放する革命軍」として歓迎されたのも同じ理由ですね。(『民主主義という病い』61ページ目参照)
しかし今の日本は生活が苦しくなってるとはいえ、今の国家体制を本気でひっくり返して打倒したいと思ってる人は皆無です。
しかし文句を言うだけで薄い革命願望を持っている“サヨク”は多いですし、人生が空虚すぎて男系固執ネトウヨになった人も心の中では革命願望があるのかも知れません。
そんな日本で「Revolution」とか「革命」をいい意味で使うのは、戦後民主主義サヨクの駄々っ子感が強く、フランス革命の実態も併せると、全然カッコいいものではないなと思うようになりました。

 

9.「理性主義」の危険さ
『愛子天皇論2』の135ページ目の欄外に「理性主義は左翼なのである」とありますし、ライジングVol.508でも理性とリベラルの説明があります。
「理性」というと一見よく聞こえてしまうのですが、この点もバークは説明してくれていて、革命派は「歴史の連続性、常識、王制なんか要らない、なぜなら俺たちには理性があるからだ」という意味で使っていたと言います。
平たく言えば「俺たちには理性があるんだ!だから常識なんかうぜえからブッ壊しちまえ!文句があるやつは殺す!」ということですね。
「理性」をWEB辞書で調べると、「道理によって物事を判断する心の働き。論理的、概念的に思考する能力」と出てきますし、普通は「理性で欲望を抑えた」という使い方をするので、フランス革命に道理も論理もないのを正直どう捉えたらいいかと思っていました。
ウィキペディアの「理性主義」を見ると、「人間全般に先天的に備わっている能力」とキモイ説明が書かれてますし、なにより『愛子天皇論2』184ページ目にも「フランス革命以後、GOD」に代わって「人間の理性」が主権を持つようになり、「人権」という「理性神」が妄信されるようになった」とあるので、一神教の感覚の人による屁理屈のカルトと思っておけばいいですね。
人権を連呼する人たちに「一方的に叩かれた松本人志や草津町長や伊東純也の人権はどうなるの?」と聞いたら確実に無視されるのもそういうことでしょう。
良いと思っていたら全然違ったという面では、西郷隆盛が言った「(未開の国に慈愛でなく残忍なことをして自分たちの利益のみをはかっているから)西洋は文明でなく野蛮」の言葉も思い出します。

最近では「ポリコレの理念自体はいいが、ポリコレを押し付けるな」と言われます。人権自体がおかしいとまでは言えないのが今の世間一般の感覚でしょう。
ですが、『省察』を読むと、230年前の歴史の事実として、「人権」を使って、「この素晴らしい理性主義に逆らうとは何事だ」と言って暴れた人たちがいるのがわかります。
昔はギロチンだったのが、今は社会的抹殺・キャンセルカルチャーになってるだけであり、これは『日本人論』の趣旨そのものです。

また、フランス革命を元にしたサブカル作品はいろいろありますが、なぜ王室の人たちが処刑されなきゃいけないのか納得のいく説明をしたものは見たことがありません。
贅沢をしてたから皆殺しにされるなんてかわいそうでしかないのですが、この素朴で常識的な感覚を描いたのが『民主主義という病い』でした。「王が処刑されたのは歴史の流れでしょうがなかった」という空気に水を差しています。

それと、ディズニーや映画会社やゲーム会社といった企業が、なぜ作品を毀損し商売的にダメージになるポリコレを受け入れようとするのかですが、「企業価値が高まって融資を受けやすくなるから」と分析している人がいました。ではなぜ企業価値が高まるのかと言えば、やはり根底に「人権は良いもので大切」という感覚があるからでしょう。

 

10.福澤諭吉との共通点(保守としての生き方)
『省察』第八章には、フランスの革命政府は困難から逃げているとしたうえで、
「困難に立ち向かって克服することこそ、分野のいかんを問わず、傑出した存在となるための条件なのだ」とあります。
これは「本来の保守の精神は過激なもの」の話や、『差別論』の「闘う魂こそが輝くのだ」も通じます。
男系派の「先例だから何も変えるな」は、要するに「何もしない」ということなので、困難に立ち向かうも何もなく、やはりこの点でも男系派は保守ではありません。
また、今日の日本人の感覚だと、「仕事と政治は何の関係もない」と思ってる人が多そうですが、
福澤諭吉「一身独立して一国独立す」by『学問のすゝめ』
小林よしのり「現場を取ってプロになれ」by『脱正義論』
エドマンド・バーク「困難にぶつかることで人間の精神は鍛えられ、技能も研ぎすまされる。ごまかし仕事に終始した者には怠けたツケが回ってくる」
ほぼ同じ趣旨のことを言ってますね。

 

11.革命派の女性差別に怒る保守主義の父
バークは第四章でこう指摘しています。
「(革命派にとって)女は人間というより動物で、おまけにさほど高級な動物ではないとくる。」
革命派によってフランス人女性の社会的地位が極限まで下がったことを批判しています。
人権宣言が男だけだったことでフランスがどうなったかが垣間見えます。
現在ではリベラルは女性差別反対、保守は女性差別容認と捉えてる人が多いですが、原典や歴史的事実に当たると真逆でした。
「実際に自称保守やネトウヨたちは男系固執を始めとして女性差別してるじゃないか」と言われそうですが、その人たちは全員、バークの言う保守ではありません。
高度経済成長期に現れた専業主婦を先例にしたりして、女性は結婚後は家にいるべきとか決めつけてる男尊女卑の男でしょう。
やはり自称保守は革命派と変わりませんね。

 

【バックナンバー】
第1回
プロローグ
1.保守は逆張りではない
2.言葉の中身、論理の有無

第2回
3.設計図の欠陥を指摘すること
4. 「人権はヤバイ」と230年前から言われていた
5.「国をどう動かしていくか」という国家観
6.王と伝統との関係

 

 


 

 

次から次へとめった斬りという感もあって痛快!
まあ、私が「革命」にいいイメージを持ったのはプロレスの「天龍革命」あたりですけど、あの時はもう「維新」は長州が名乗ってたし、「下剋上」じゃいまいちサマにならないですしねえ。

それにしても、「理性主義」に「理性」が全然ないという実態には改めて呆れるしかないし、バークが革命派の女性差別を批判していたというのも重要なことですね。

さあいよいよ佳境、明日もお楽しみに!

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